私たちの実践

保健室から学校が変わった──養護教諭の実践

私が養護教諭として赴任した市内の小学校は、器物破損やいじめが絶えず、市内でも評判の荒れた学校でした。保健室は子どもたちのたまり場になっていて、土足でベッドに上がり、授業にも行かずにマンガ本を読みふける始末──。「この子たちはどうしようもない。親は何をしているんだ」とあきれていました。

しかし、セミナーに参加し、私が自らの人生でつくってきた「ちゃんとせんといけん」(ちゃんとしないといけない)というつぶやきで子どもたちや親を責めていたことに気がつきました。「子どもたちや親の痛みを受けとめていなかった」と後悔し、「子どもたちにいきいきと元気に学校生活を送ってほしい。そのために養護教諭としてできることがあるはず」と「ウイズダム」(解決と創造のためのメソッド)に取り組みました。

保健委員会の子どもたちに「生活のリズムを改善するために月に1回、テレビやゲームをやめる日をつくろう」と提案すると、最初はブーイングの嵐。しかし、保健委員会のメンバー24人を、アイドルグループを真似て学校の頭文字を取り「AKG24」と命名した辺りから、子どもたちが乗ってきました。

また、「AKGエクササイズ」という踊りをつくり、昼休みに保健委員の子どもたちが校庭で踊ると、ほかの子どもたちが一緒になって踊り始めるなど、学校全体にAKG活動が広がってゆきました。

PTAや保護者の協力も得られるようになり、AKGデー(ノーテレビ、ノーゲームの日)が生まれ、朝、校門でのAKG挨拶活動も始まりました。 気がつけば、学校の荒れが収まり、けがも減って、皆がいきいきと活動するようになっていたのです。

この取り組みは、市内の学校保健大会で発表したり、「ライフスキル教育実践校」として、他県から教育委員会が視察に来たりするまでになりました。何よりも、子どもたちがいきいきと学校生活を送っていることが、本当にうれしいです。転勤して5年になりますが、いまだにAKG運動は続いています。

「子どもたちやお母さんたちの痛みを受けとめる場が保健室であり、養護教諭はその同伴者ではないかと思います」と語る佐能さん

「子どもたちがリラックスして、心も体も癒やせる場にしたい」と、子どもたちの好きな本を置く

子どもたちが親しみを持ってくれるように、居場所を示すプレートも手づくりで