障害福祉制度改正につながった基礎研究について、医師の前田浩利さんが米国小児科学会(PAS2021)で発表しました

2021年8月18日
お知らせ
医療

「Golden Pathシリーズセミナー」でTL人間学(魂の学)を学ぶ前田浩利さんは、医療法人財団はるたか会の理事長で、東京医科歯科大学医学部臨床教授です。現在、5つのクリニックと2つの訪問看護ステーションで、1000名以上の子どもたち、そして450人以上のお年寄りや末期がんの患者さんをケアしています。

その前田さんがこのほど、「米国小児科学会」(Pediatric Academic Societies 2021:PAS2021、4月30日~6月4日、62の国と地域より8300人以上が参加、発表演題数約4000)で、「運動機能が高い『医療的ケア児』のケア負担を評価するための方法論の開発」(Development of a methodology to assess the care burden for the children who require advanced medical care, despite being highly functional)をテーマに発表しました。
わが国では、医療技術の発達によって、新生児の救命率が大きく改善し、それに伴って、気管切開や人工呼吸器など、日常的に医療ケアを必要とする「医療的ケア児」が急速に増加しています(全国推計2万人以上)。
その中で、自宅でのケアの場合、運動機能の高い(活発に動くことができる)「医療ケア児」は、生命維持に必要な気管切開チューブや人工呼吸器が抜けたり、外れたりするリスクが高く、常時見守りが必要となり、家族の負担がさらに増大するというテーマがありました。
しかも、そのような家族のケア負担増大を定量的に評価できる基礎研究データがないことから、これまで、家族のケア負担増大を考慮する障害福祉制度が存在しなかったのです。
そこで、前田さんらは、家族のケア負担をデータ化するために、TL(トータルライフ)人間学実践企業の小林製作所がつくったコマドリカメラ(Sopac-C)を複数台家庭に設置し、研究を始めました。
ところが、当初、何度データを収集・分析しても、実証することができませんでした。
そこで、前田さんらは、「因縁果報ウイズダム」(「魂の学」に基づく問題解決と創造のためのメソッド)に取り組み直し、患者さんの家族から詳細な聞き取りを行い、仮説を立て直した結果、ついに「医療的ケア児の運動機能が改善すると、家族のケア負担も増大する」ということを定量的に実証したのです。
この前田さんの研究によって、これまで評価困難であった医療的ケアの負担が評価可能になり、2021年4月には「障害福祉サービス等報酬改定」という新たな制度が施行され、さらに6月11日の参議院本会議で「医療的ケア児支援法」が成立。わが国の障害福祉制度改正への道を開くことになったのです。